会長挨拶
来る平成29年9月8日(金)、9日(土)にロイトン札幌にて、第9回日本Acute Care Surgery学会学術集会を開催する運びとなりました。現在、教室をあげて鋭意準備を進めている次第でございます。
本学術集会では、メインテーマを「Acute care surgeryの未来を拓く - 外科学と救急医学の新たなる調和 -」とさせていただきました。Acute care surgeryは外科学において、外傷や内因性疾患による緊急手術を含む治療、また術後合併症の治療など「外科的救急医療」をクローズアップした分野であり、「外科学の原点」と言っても過言ではありません。しかし近年、救急医療における様々な研究から得られた知見は、外科医がただ単にメスを振るうだけでは患者の救命率を向上させることは出来ず、むしろ低下させることすらある事が明らかになってきました。緻密かつ迅速なベテラン外科医のメスはもちろん重要ですが、例えば重傷外傷では初回手術は止血と損傷臓器の一時的に修復に止め、集中治療で全身状態を改善した後、二期的に根本手術を行い機能修復をはかる戦略が患者の救命につながります。「メス」と「頭脳」、即ち「外科学」と「救急医学」の両輪が揃って初めて患者の救命率は向上することになります。この両輪をいかに上手く調和させるかは、本学会が有効に機能し、社会に最大限の貢献を果たすための必須要件と考え、本学術集会のテーマとさせていただきました。
一方、本邦では交通事故の減少に伴い重傷外傷症例が減少しており、外傷手術の経験のない外科医も増えております。都市部では症例集約により、診療の質を維持向上しようと試みられておりますが、北海道においては搬送距離や医師数・症例数の問題から難しく、我々消化器外科医など救急外科を専門としない外科医が年に数件あるかないかの重症外傷診療にあたっております。この地域間格差を解消するすべは、内科的救急や集中治療を得意とする「救急医」や「集中治療医」、さらにはIVR技術を有する放射線科医など、専門を越えたコラボレーションが的確に行われることが重要と考えます。本学術集会では、この「新たなる調和」を模索し、本学会のさらなる発展の一助となるべく、多数の演題をお待ち申し上げます。
尚、学会初の北海道開催であります由、北海道の名産を大いに堪能していただく全員懇親会を用意させていただきます。御参加の皆様には、会のプログラムの一つとして是非、懇親会にご参加いただき、明日のAcute Care Surgeryについて語りつくしていただけましたなら、開催責任者としてこれ以上の喜びはございません。初秋の北の大地へ多くの皆様においでいただくことを、教室員一同、心よりお待ち申し上げます。
平成29年1月1日
第9回日本Acute Care Surgery学会学術集会
(北海道大学医学研究院 消化器外科学教室II 教授)